PP低減方法の種類
GT7においてPPを大きく調整するためにはタイヤを含む足回りを変える、バラストを積む、パワーを抑える等の方法があります。パワーを抑えるためにはフルカスタマイズコンピュータによる出力制御とパワーリストラクターによる出力制御があるので、2つの違いについて検証してみました。
フルカスタマイズコンピュータによる調整とは?
エンジンのみを動力とする自動車の場合、おそらくは吸気量の調整による制御を想定しているのだと推測します。自動車はアクセル開度によって吸気量をコントロールします。出力を80%に制限するとアクセルべた踏みでも80%程度のアクセル開度と読み替えるような制御が入る形になります。
パワーリストラクターとは?
エア現実のレースではリストラクターにはエアリストラクターと燃料リストラクターが存在します。リストラクターは空気の流量を制限するもので、燃料リストラクターは燃料の流量を制限するものです。より広く使用されているのはエアリストラクターのようですが、スーパーGTやスーパーフォーミュラ等ではレギュレーションとして燃料の流量を制限しており、機械式燃料流量リストラクターが使用されているようです。
比較方法
GT7における2種類の出力制御にはどのような違いがあるのか、タイムと燃費の観点で検証してみます。
検証方法
AIと2台のみのレースを設定して、タイムと燃料消費効率を比較します。コースは筑波サーキットで5周のレースとします。比較対象とするのは2~5周目で1周目はアウトラップとして比較対象から外します。燃料消費量を分かりやすくするために燃料消費倍率は高めに設定します。
燃料消費効率の定義
傾向として早く走るためにはより多くの燃料を消費します。ショートシフトすると燃料消費は抑えられますが、タイムが遅くなります。タイムと燃料消費の効率という観点で見るとタイムと燃料消費の積が小さいほど効率の高い走りといえます。これらを考慮して燃料消費効率を以下のように定義しました。
燃料消費効率 = 100/(タイム[s] × 燃料消費率[%])
検証走行の留意点と評価方法
なるべく同じ操作となるように走行します。具体的にはシフトアップ、ダウンの回転数を合わせることを意識します。とはいえ運転技術でどこまで合わせられるか難しいので、チャンピオンラップだけでなく複数ラップで総合的に評価します。
エントリー車両
レース車両、市販車両含めて下記4台エントリーしました。
- GR Supra Racing Concept('18)
FRのターボ車両でエンジン出力がかなり大きいです。出力設定でPPが700以下となるように調整します。この状態で私が筑波サーキットで走行した場合のターゲットタイムは56~57秒となります。
- Civic Type R(EK '98)
FFのNAとして選択しました。軽量化やミッション変更など少しチューニングした状態で走行します。出力設定でPPが500以下になるように調整します。
- GRカローラMORIZO Ed.( '22)
4WDのターボ車両として選択しました。出力設定でPPが500前後になるように調整します。 - LFA('10)
MRのプレミアムスーパースポーツです。エンジンはヤマハ製V10気筒NAとなります。非常にピーキーな車両なので、安定して走行するためにややショートシフトで走行しました。
比較結果
まずは全般的な結果からです。
最高速度
いずれの車両でもパワーリストラクター制御とコンピュータ制御に大きな差はありませんでした。以下、各車両の最高速比較です。
- GR Supra Racing Concept('18)
コンピュータ制御:210.9km/h
リストラクター制御:209.6km/h - Civic Type R(EK '98)
コンピュータ制御:165.1km/h
リストラクター制御:165.2km/h - GRカローラMORIZO Ed.( '22)
コンピュータ制御:169.1km/h
リストラクター制御:169.5km/h - LFA('10)
コンピュータ制御:199.9km/h
リストラクター制御:197.5km/h
燃料消費効率
速度にあまり違いがありませんが、燃料消費効率に関しては差があり、コンピュータ制御の方が効率が高い結果となりました。唯一LFAだけは明確な差が無いですが、その理由は後述します。以下、各車両の比較結果です。
- GR Supra Racing Concept('18)
- Civic Type R(EK '98)
- GRカローラMORIZO Ed.( '22)
- LFA('10)
LFA('10)だけ傾向が違う理由
エンジン出力の特性マップを見るとLFAの最高出力は8700回転となります。当初、NAのスーパースポーツということでこの車両を検証対象に選んだのですが、非常にピーキーでハイパワーな車なので、出力制限後の最高出力でも安定して操ることが難しかったです。そこで8000回転ちょっとくらいでシフトアップして検証しました。その結果、出力制限に差が出る領域まで届きにくかったのだと思います。また、良いラップと悪いラップの差が大きく、その差が他の検証車両よりも大きかったことも影響しています。